田中仁博士

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1歳8か月の時に麻疹により失明。北海道の盲学校に中学部まで在籍した後、東京に出て国立の盲学校高等部に進学した。専攻科で鍼灸師の資格を取得した後、大学に入り数学を専攻して1998年に博士号を取得した。大学教員になったが、非常勤や特任契約での採用ばかりで、現在勤務する大学で初めて常勤職を得たのは50歳のときだった。

田中仁(たなかひとし) 筑波技術大学共生社会創成学部・准教授(2024年12月現在)
専門領域:数学(基礎解析学)
学位:1998年学習院大学大学院自然科学研究科博士課程修了
インタビュー時年齢:53歳(2020年2月)
障害の内容:視覚障害(光覚あり)
困ってきたこと
論文を書くときはパソコンでTeXを使用すれば数式を書き出せたが、それに比べて、読むときにはボランティアに点訳をしてもらう必要があり、障壁が大きかった。
博士号を取得し、論文を人並みに書いてきたが、任期期限のないポストに就職するまでに時間がかかった。障害のせいかどうかははっきりしないが、公募に応募しても面接にすら呼んでもらえず、不安定な雇用状態が長く続いて心労があった。
対応・工夫
数学科の講義では板書が多いので、板書した式などを言葉に出して説明すること、そのときに指示表現を使わないように注意することを頼んだ。演習では問題の答案を板書することが求められるが、自分の答案の板書作業は他の人に依頼した。試験では、問題を点訳してもらった。別室で受験し、自分の解答を出題者の前で読み上げ、転記してもらった。
論文の数式を読むことは、PDFファイルの数式をテックのソースに変換できるソフト(InftyReader)が開発されたおかげで、非常に容易になった。自分の論文の生産性も、このことを機に大きく向上したのではないかと思われる。